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日本人は「自分でお釣りを数える癖」をつけた方がいい

◆自分で自分を守る生活の知恵  基本的に、世界のほとんどの国では、お釣りはその場でもらう方が数えます。つまり、お客さんであるあなたや僕が確認するのです。お店の人には任せません。  日本では、コンビニの袋の持つ部分を店員さんがねじって持ちやすいようにして、オヘソの前で手を組んでお辞儀して、お釣りをお客さんに代わって数えるようになりました。まあ、便利ですね。  んで、もうすぐ「日本人はお釣りを自分で数えない」という情報が世界中に広がるでしょう。みんな、親切な振りをして、日本人観光客の前でお札を数えて、そして抜くのです。  もちろん、これは技術が必要です。ナイジェリアのにいちゃんは、なんか、マジックが趣味の素人に毛が生えたタイプでしたから、なんとなく、見抜けました。でも、彼も今頃は上達しているはずです。すでに、タバコの箱なんか使わず、難なく指にはさみ、手の反対側とか袖口に隠せるレベルに達しているかもしれません。やっぱり、日々の地道な努力が勝利するのです。  逆に言えば、日本人で、「抜き取りの技」を身につけている人からすれば、日本は「小銭稼ぎの天国」になるはずです。ほとんどの日本人は、目の前でお札を数えられたら、それを受け取って、もう一度確認したりしません。僕も、自分であらためて数えようとすると、「なんだか、相手を信用してないように思われるだろうな。それは嫌だな。傷つけたくないな」と思って、ためらいます。ここが世界との違いです。ほとんどの国では、店員が数えても、自分でもう一度、平気で数えるのです。  じつは、日本人も「自分でお釣りを数える癖」をつけておいた方が絶対にいいだろうと僕は思っています。それが、自分で自分を守る生活の知恵だし、世界中どこにでも行ける旅人の処世術だと思うのです。  最近は、特に、目の前でお釣りを数える店員さんの動きに、妙なアピールを感じるのです。きっちりしているというか、「私が数えたんだから、あなたは数える必要はないですからねっ!」という気迫さえ漂うように思うのです。  かくして、日本人は世界でぼったくられていく、と僕は思うのさ。 ※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中
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