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解雇された50歳の観光バス運転手。“コロナ失職”の深刻な現状

 各業界に吹き荒れるコロナ禍。停滞する日本経済や企業活動への損失は計り知れないが、解雇や契約解除などで職を失った人はすでに続出している。今後間違いなく増える“コロナ失職”の深刻な現状に迫った!
コロナ失職の悲鳴

堀江光将さん(仮名・50歳)

インバウンド需要から一転。解雇続出のバス運転手の実態

▼堀江光将さん(仮名・50歳)……長距離トラック運転手を経て7年前に北海道の観光バス会社に入社。アジア系旅行会社のツアーバスの運転手を務めるも3月末で解雇  インバウンド需要で事業拡大していた会社も多い観光業界。そこを襲ったコロナショックの打撃は大きい。北海道バス協会が加盟124社を調査したところ、今年6月末までの貸し切りバスのキャンセルは1万2000台、減収は8億6000万円に上るという。そんな観光バス会社で正社員として運転手をしていた堀江光将さん(仮名・50歳)も、「3月末で正式に解雇されました」と話す。 「2月末の時点で『今の状況ではみんなを雇うことができない。本当に申し訳ない』と社長から告げられました。泣きながら何度も謝られて、さすがに文句を言うこともできませんでしたね。3か月前まではアジア系旅行会社からツアーバス契約を多数受注していて、依頼は毎月増えていくような状況。運転手を含めた社員の数も最初は7人しかいなかったのが、倍以上に増えていたんです。昨年冬のボーナスも15万円増えて約30万円。この勢いのまま行けると思ったんですが……。まさかクビになるとは夢にも思っていませんでした」

春節中は毎日乗務が半分以上自宅待機に

コロナ失職の悲鳴

春節中のツアーも車内はガラガラ

 年明けに中国で新型肺炎大流行のニュースが報じられると状況は一変。中国の旅行会社からツアー中止の連絡が相次ぎ、書き入れどきのはずの春節期間には7割近くのツアーがキャンセルに。1月下旬~2月上旬は従業員の半分以上が自宅待機となってしまった。 「これが大企業なら、休めてラッキーと喜んだかもしれません。でも、吹けば飛ぶような零細バス会社にとってこの状況が死活問題なのは私にも理解できました。ただ、このときはインフルエンザの流行みたいにしばらくすれば落ち着いて、すぐ以前のように外国人観光客は戻ってくると楽観視していたんです」
コロナ失職の悲鳴

乗務せず会社で時間をつぶす日もあったとか

 しかし、その後も事態は日に日に悪化。各国が出入国の制限を設けたことで「ツアー再開のメドが立たない」と連絡があり、契約がすべて白紙になったそうだ。 「1月は減便になってもまだ運転する機会はありましたが、2月は数える程度しかなかったです。私の場合、平均月収は27万円ほどですが基本給は17万円程度しかなく、夜間・早朝手当や超過勤務手当の占める割合が大きいんです。だから、乗務時間の少なかった2月分の給料は24万円、最後に振り込まれた3月分の給料は20万円を切っていました。私は現在独身ですが、バツイチのため子供に月5万円の養育費を払わなければならず、仮に解雇されなくても収入がここまで下がってしまうといずれ辞めていたと思います」
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失業手当だけではとても生活できない
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