「アイスバスケットチャレンジブーム」ALS関係者から言いたいこと
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その32 ―
難病のALS支援の氷水かぶりのチャリティ、アイスバスケットが流行っているが、ALS関係者の私としては、大きく取り上げられて嬉しい反面、ちょっと物事の本質を捕らえてない、表面的なお祭り騒ぎにしか映ってない部分があり悲しい。
今、ALSの関係者と書いたが、実は私の母親がALSにかかり、1989年に亡くなっている。ALSとはどういう病気か、よくわかってないで、騒いでいるのようなので、一応ここで病気の内容を報告しておく。
ALSは最初に手足がしびれ、しだいに全身が動かなくなっていく病気である。うちのおふくろも、最初は包丁が切りづらいと言って、リュウマチだと思っていた。1年以上経ってから、これはおかしいと精密検査してわかったのだ。
ALSとわかった段階で、一般の人は「死へのカントダウン」が始まる。すべての筋肉が衰え、やがて目しか動かなくなる。だから目で文字盤を見て、合図をして意思を伝えるのだ。最後は肺の筋肉が犯され喉を切開して、人工呼吸器を取り付けなければならない。
けど、ホーキング博士とか徳田虎雄氏とかは、存命しているじゃんというが、それは一部の選ばれたお金持ちだけが許される、特別な延命なのである。
木村家の場合、実は父親を高校2年のとき、急性骨髄白血病で亡くしてる。スゴいだろ、世界の大難病で両親亡くしてみろ。毎朝、体に湿疹のような紫斑が出てないか、手足がしびれてないか、不安でしょうがなくなる。もう慣れたからいいけど、死の恐怖とは、常に隣合わせの50年だったよ。今後もだけど。
そんで母親がALSだとわかったとき、死んだオヤジは海運業で当てて、現金3000万円と3000万円の不動産を残した。けどその多くを、ALSに使い家も全部売った。ALSは難病指定だから、お金はそんなにかからないというが、それは治療のみであって、介護は別だ。
男兄弟ゆえに、大した介護もできない。1日1万円は最低ヘルパーさんに払う。トイレの処理とか、喉の痰取りまでつきっきりでやってもらう、プラス個室料金とかね、いろいろ金がかかるんですよ。
すでに東京で原稿書きをやっていたから、たまにお見舞いに石巻に帰る。けどおふくろは喋れないから、延々泣いているだけ。文字盤で会話をしたいと、ヘルパーさんに目で訴える。何を言うのかと思うや「コ・ロ・シ・テ」だと。
一緒背中が凍りつく。寅さんじゃないが、心で泣いて、作り笑いをするのが精一杯だ。「何をバカなこと言ってんだよ~」と必死に会話をそらすしかないじゃないか。
母親は多額のお金がかかっているのを知っているのだ。子供らに財産を残せないのは、自分のせいだから、早く死にたいばかり言う。こっちとしては、自分を生んでくれた親、財産なんていらねえよ、全部使ってくれと。
でも、いよいよ家まで売って、カネが無くなってきた。病状も悪化し自分で呼吸ができなくなりつつある。これ以上の延命は、喉を切開するしかない。兄貴と2人で相談するが、そこから先のお金はない。借金するか? いや返せる見込みはないし。正直、兄貴はだいぶ疲れていたと思う。われわれは苦渋の決断をして、喉の切開を断念した。
それから直接おふくろがなぜ死んだのかわからない。それは現場にいなかったからだが、なんか聞く問題ではないと思ったからだ。ただ窒息死とか呼吸困難ではない。つまりおふくろも死を悟って自ら弱っていった。医療現場としても、フェードアウト方向で暗黙に何かが進んだのではないか。
亡くなったときは、ちょうどテレビ朝日の深夜放送に出ていた。しかも12月でギャルと鍋祭りって、タイミング悪くバカな企画に出ているもんだ。そのまま始発で石巻に帰ったけどね。
オレと兄貴は、あれ以上おふくろを生かしてやれなかったことを、少し悔いている。だって、現に生きている人が結構いるのだから。
■木村和久(きむらかずひさ)■
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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