山田ゴメスの俺の恋を笑うな
凄いぜアストロ球団!
ついに『アストロ球団』のDVDをゲットした!
ここ数年で観たシリーズもののDVDで、
私がいたく感動したのは、
『お笑いウルトラクイズ・ダイジェスト版』、『美しい男性』
といったところだが、
『アストロ球団』
も、それらと肩を並べて
決して劣ることのない珠玉の出来だと断言できる。
『アストロ球団』は、
昭和47年から昭和51年まで、
少年ジャンプで連載された野球漫画だ。
「好きな野球漫画は?」
と問われれば、
『キャプテン』『ワンナウツ』『ラストイニング』……
と、いくつもの名作が頭に浮かぶが、
あえて一番
を問われれば、私は
『アストロ球団』
を挙げるに違いない。
ストーリーは、私世代の男性なら、
すでにご存じの方も多いだろうが、
一言で説明するなら
超人野球漫画
である。
もうちょい詳しく説明するなら
故・沢村栄治の遺志を受け継いだ
ボール型のアザを持つ昭和29年生まれの9人超人たちが
「打倒アメリカ大リーグ」の目標を掲げ、
「一試合完全燃焼」を信条に、
世界最強の野球チームの結成を目指して戦う、
『南総里見八犬伝』をベースにした物語
である。
そして、その超人たちのプレイは、
『巨人の星』の
消える魔球や
『侍ジャイアンツ』の
ハイジャンプ魔球・大回転魔球・分身魔球などを
軽く凌駕し、
外野にいる大男が小男をブン投げて
ホームランボールをもぎ取ったり、
ボールが3段にドロップしたり、
ピッチャーがボールを投げてから
キャッチャーが捕るまでのあいだに
野手全員がマウンドに駆け寄ったり、
1塁手と遊撃手が分身して
1・2塁間と2・3塁を埋め尽くしたり、
ピッチャーが投球フォームに入ってから
右手に持ったボールを
左手に投げ移したり(ボーク)、
バッターが一塁に走るまでに
野手全員がナイアガラの滝よろしくに
上から降ってきて蹴ったり肘打ちしたり(走塁妨害)、
バットがヌンチャク型だったり(たぶんルール違反)
……と、少なく見積もっても
あとこの50倍は突っ込みどころが満載の、
アンチ・リアル系野球漫画の最終進化型
と呼んで相応しい大問題作なのだ。
そんな昭和の奇書が、
なんとアニメではなく
実写版として映像化。
しかも、さらに驚くべきことは、
もはや、SFXと呼んでも差し支えない
宇宙的プレイの数々が
わりと原作をなぞって
忠実に再現されているのである。
(川上・長島・王・金田ほか、実在する漫画の登場人物も、まったく似ていない役者が演じてたりしている。あと、沢村栄治役は長嶋一茂、ナレーションは古田敦也、と著名野球関係者も友情出演!)
今、私は
「忠実に再現されている」
と書いたが、じつはこの作品、
地上波主導のものではないようで、
ってことは、かなりの低予算のなかでの
過酷な作業を強いられていたのは
想像に難くなく、
ズバリ言ってしまえば、その仕上がりは、
まことにもってチンケだ。
つまり、正確には
「忠実に再現されている」
のではなく、
「忠実に再現しようとする
努力の痕がにじみ出ている」
のだが、そこがまたたまらない。
個々のキャストを
息苦しいまでに
熱く演じる役者陣、
それに応えようと
限られた予算内で
徹夜徹夜の試行錯誤を
繰り返すスタッフ陣
……作り手側の誰も彼もが
この荒唐無稽な超人野球漫画を
パロディとして捉えていない
真摯さが素晴らしいのだ。
上手(=優れた芸術的技術)が
あえて下手を打ち出す
ヘタウマ
はセンスの良さに、ただ「ほお」と感心するだけだが、
下手(=低予算)が
ひたむきに上手を目指す
ウマヘタ
は、ときに人の心を根底から揺さぶるものである。
おそらく、プロデューサーは
「俺が将来偉くなったら、
絶対に『アストロ球団』を
映像化してやる!」
といった野望を
パシリのころから
胸に秘め続けていた
夢追い人だったに違いない。
そう考えれば、
この映像が世に出たのが
2005年なのも
納得のいく、
とてもイイ話ではないか。
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