パッカーンと屋根が開く新型ポルシェ911タルガは、カネ持ち感満載
不肖ワタクシが6歳のみぎり、今は亡き実父が株で儲けてポルシェを買いました。911タルガというモデルでした。
貧乏諸兄は、「タルガ」という単語を見たことも聞いたこともないでしょうが、リヤピラーを残して屋根を脱着できる半オープンモデルのことで、当時父は「日本に3台しかないんだぞ!」と自慢し、普通の911を「ニセモノ」と呼んでいました。実はそれらも本物だったと知ったのは、割と最近のことです。
が、父はその後も「ホンモノのポルシェはタルガだけ」と信じていたのか、約20年後、再び株で儲けて911タルガを買いました。それが私が生まれて初めて運転したポルシェとなりました。
’88年式の930型ポルシェ911タルガ。当時の911はまだパワステもATもありませんでした。初めてのポルシェは、クラッチ、ブレーキ、アクセル、すべてのペダルが実に重く、ギアはバターにナイフを入れるように曖昧で、しょっちゅう何速に入っているのかわからなくなってパニクりました。
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が、クルマ好き青年だったワタクシは、何度か父からポルシェを借り出して爆走しました。外苑のいちょう並木で背後からマセラティに追われたときは、気合いのレイトブレーキで右折をかました瞬間ドリフトしてビビりました。あれが私の生涯最初のドリフト……つーかチンケなタックインですね。専門用語ですいません。当時の911は下手な曲がり方をするとすぐお尻が流れたのです。
初めてのポルシェは凄いクルマでした。ボディは金庫のように頑丈で、ペナペナな国産車とは比べるべくもなし。しかも燃費がいい。長距離を走るとリッター10㎞走るので仰天しました。当時の国産ターボ車は猛烈に燃費が悪く、リッター6㎞くらいっきゃ走らなかったのに。パワーもレスポンスも何もかも別格、手応えは超絶ホンモノ、そのうえ燃費もいいポルシェが本当に眩しかった。でもその直後、さる偉人に乗せていただいたフェラーリはその数億倍モノ凄く、全身に電気が走り、私はその場で「ポルシェなんかハイエースの親戚だべ!」とうそぶくようになったのです。つまり、世の中上には上がいるということです。
その後、私は節約を重ねてフェラーリを10台乗り継ぎ、ポルシェは1台も買いませんでしたが、私にとって911タルガは大変思い入れのあるクルマです。そのタルガが新型になり、こんなにカッコいい屋根の開き方をするようになりました。
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昔のタルガは今のホンダS660みたいに、幌製の屋根を外してどっこいしょとどっかにしまってオープンにしたものです。しかも屋根を外して走ると、室内に風の渦が吹き込んでゴミも目に入るし不快そのもの。「もう二度と開けるか!」って感じでしたが、新型タルガはボタンひとつの電動オープン。窓を閉めておけば頭上をサワヤカナな風が吹き抜けて、カネ持ち気分満喫です。
ただ、今回乗ったタルガ4GTSはエンジンがいけない。こういう優雅なクルマにカリカリチューンの430馬力は似合わない。350馬力の素のタルガ4のほうがエレガントでしょう。値段も500万円ほど安いのでお金を節約できます。
【結論】
今回、新型911タルガの屋根の開き方に感動して、読者様とはまったく完璧に縁のない死ぬほどどうでもいいことを書き連ね、本当に申し訳ありません。次回からは必ず役に立つ記事を書かせていただきます1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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