都知事選で埋もれてしまった横田基地の「空域返還」と「軍民共用化」問題
横田基地は、福生市や西多摩郡瑞穂町など東京5市1町にまたがり、その上空に広がる管制空域、通称「横田ラプコン」は、北は新潟県から南は静岡県の相模湾、西は伊豆半島まで実に1都8県にも及ぶ。戦後、連合軍が日本の空の管制権を掌握して以来、日米地位協定に基づき今も米軍の管理下に置かれているが、この巨大な「空の聖域」があることで、民間航空機がこの空域を飛行する場合、米軍による航空管制を受けなければならず、羽田や成田から西日本方面などに向かう発着便が、一度太平洋上まで出て不自然に大きく急旋回するルートを通るのはこのためだ。かねてより、横田基地の「全面返還」と「軍民共用化」を言って憚らなかった石原慎太郎元都知事は、知事就任直後から日米両政府に働きかけ、2003年には当時の小泉純一郎首相がブッシュ大統領と「軍民共用」の実現可能性を検討することで合意。2006年10月、ようやく横田ラプコンの一部返還が正式に決まった。だが、その後は航空自衛隊の航空総隊司令部が横田基地内に移転されるなど「軍軍共用化」は進んだものの、民間航空機の乗り入れになどに関しては完全に頓挫したまま。本来ならば、国の管轄となるこの問題と、東京のリーダーはどう向き合えばいいのか。長年、横田基地の全面返還を訴えてきた日本愛国者団体「一水会」代表の木村三浩氏が話す。
「そもそも、戦後70年も経っているにもかかわらず、主権国家であるはずの日本の首都に、これほど規模の大きい外国の軍隊が駐留し続けていること自体、広い世界を見回してもほかに例がありません。日米安保の観点からも、本来ならば日本政府が主導して基地の返還を働きかけなければならないところ、これまでの歴代政府はなし崩し的に看過してきた……。首都上空を『制圧』され、今なお民間の飛行機も自由に飛ばせない状況が続いており、これまで大きな事故が起きなかったことが不思議なくらいです。東京都は国に働きかけて、一刻も早く横田基地という危険を除去すべきときがきている」
横田ラプコンの最高高度は2万3000フィート(約7000メートル)もあり、その空域は東京ドーム153個分に匹敵する714ヘクタールにも及ぶ。当然、日本の航空行政を妨げており、五輪を控え訪日外国人観光客が急増するなか、増発を余儀なくされている民間航空機は、横田ラプコンのわずかな間隙を突いてフライトする以外なく、空路の過密化で常にニアミスの危険と隣り合わせの状況が続いているのだ。木村氏が言う。
「石原都政を継承した猪瀬直樹元都知事も、2020年に向かって航空需要が高まることを想定し、都議会で『軍民共用化に引き続き取り組み、五輪開催を契機に日米協議の促進を政府に強く求めていく』と意気込みを語っていましたが、舛添要一前都知事に代わって以降、急ブレーキがかかった……。軍民共用化が実現すれば、1610億円の経済効果がもたらされるという試算もあり、舛添都政が掲げていた多摩地域の発展にも寄与できたのに、なぜか彼はこの問題にまったく手をつけなかった。あまりのやる気のなさに、当時、知事宛に質問状を送ったくらいです」
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