更新日:2022年08月22日 02:49
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風俗の収入を隠し、生活保護を不正受給――田中由美さん(仮名)の甘くない現実

 “小田原ジャンパー事件”を機にあらためて注目される生活保護。不正受給対策ばかりが叫ばれるが、実際に不正受給している人たちは何を思い、どのような生活を送っているのか――

不正受給者の素顔

不正受給 車を乗り回し、仕事せずにのうのうと生きている……。そんなイメージの強い不正受給者だが、現実はそう甘くない。その一例が田中由美さん(仮名・50歳)だ。 「もともと、20歳の若さでシングルマザーになり、給料の高い保険屋、パチンコ屋などで必死に働きました。 それでも借金は膨れ上がる一方。息子は成人を迎えても引きこもりで働くことができず、仕方なく40歳で風俗を始めました」  精神的苦痛から心の不調に陥り、片付けることが億劫に。部屋にはゴミが積み上がり、飼い猫の餌や糞尿も……。冷暖房もなく、冬場は猫を抱いて寝るという苦しい日々に、やがて限界が訪れた。 「毎年一度、大病を患うようになりました。糖尿病、腎不全、脳炎、子宮頸がん。入院が1か月以上に及ぶこともあり、昼の仕事を探すのはどうしても難しくて……」  どうにか風俗で食いつなぐも、毎年の大病もあり、雪だるま式に借金が積み重なり、家賃も半年間滞納してしまう。 「ある日、大家が来て『家賃払えないなら生活保護を受けるか、体を売れよ!』と脅されました。本当に悔しくて悔しくて……」  この大家の一言が決め手になり、田中さんは8年前に生活保護を申請。風俗出勤で稼ぐ約8万円に、家賃補助込みで毎月約13万円の支給が加わり、生活は安定した。ただ、生活保護費以外に収入がある場合は、それを月に一度報告する義務がある。健康的な生活を取り戻しつつあるが、「不正受給」に変わりはないのだ。 「子供も私の入院を機に、半ば強制的ですが社会復帰して家を出ていきました。少し余裕が出たので、最近は会員制のスポーツジムに通っています」
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小田原ジャンパーの件に、心が揺さぶられた
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