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日経新聞の「世界の自動車産業EV化まっしぐら報道」に喝! マツダのスカイアクティブX試作車の可能性【清水草一】

 日経新聞は連日のように「世界の自動車産業は電動化に向けてまっしぐら」みたいな記事を載せきまくり、まもなくガソリン車やディーゼル車はこの世から消滅するかのような雰囲気だが、ちょっと考えてみてくれ。  あなたは次の自家用車として、EV(電気自動車)を考えてますか? 「はい」と答える人は、最大でも3割だろう。なぜなら、自宅に充電設備を設置できるのは、持ち家一戸建て(車庫付き)のにお住いの方だけで、その割合が3割くらいだからだ。賃貸や、持ち家でもマンション住まいの方には、そもそもEVという選択肢はない。  英仏は、2040年までにガソリン車やディーゼル車の国内販売を禁止する方針を打ち出したが、非現実的だ。もちろん電動化は徐々に進むでしょうが、ガソリン車やディーゼル車にもまだまだ改良の余地はあり、少なくとも火力発電で作った電気を充電するEVとなら、エネルギー効率やCO2排出量で、いい勝負が続けられるはずなのだ。  なかでもガソリン車やディーゼル車の将来性に対して、最も前向きに考えている自動車メーカーが、マツダだろう。

スカイアクティブXエンジン

 マツダが誇る独自のエンジン技術といえば、スカイアクティブD(ディーゼル)が代表だが、実はディーゼル乗用車が売れている大きな市場は欧州だけ。北米や中国ではサッパリだ。世界の自動車業界は、まだまだガソリン車を中心に回っている。  そこで、というわけでもないが、このたびマツダは独自のガソリンエンジン技術の試作車を公開した。その名は「スカイアクティブX」。簡単に言うと、ディーゼルエンジンのように燃えるガソリンエンジンである。ディーゼルエンジンがなぜ燃費がよくて力強いかというと、シリンダー内の圧縮比を高め、高温で一気に軽油を爆発燃焼させているから。  同じことはガソリンエンジンでは不可能だったが、それに近いことを可能にしたのが、スカイアクティブXだ。  昔から研究されていた技術だが、実用化しつつあるのはマツダのみ。その点、ロータリーエンジンにちょっと似てますね。世界はEV化に向けて全力疾走状態なので、ガソリンエンジンの世界でこんな画期的な新技術が登場するのは、久しぶりでもある。  燃費は、従来のガソリンエンジンより2割ほどアップ。パワーもトルクも2割程度アップさせることが目標だ。これでほぼ、火力発電のエネルギー効率と同等になる。なら「充電に時間がかかるEVなんかいらないじゃんか、8割が火力で発電してる日本では!」つーことになる。  で、試作車に乗った感じはどうかというと、まったくフツーに感じました。ちょっと低速トルクが太くて、ちょっと静かだな~程度で、なんの特別感も違和感もナシ。2割くらいのパワーアップってのは、ドライバーには違いがわかりずらい。ただ、給油の際に燃費がいいことが実感できるのみ、ということになりそうだ。  革新的な新技術にしては、あまりにもフツーすぎてアピール性には欠けるが、マツダは「自然に気持ちよく走って燃費が良ければそれが一番」と考えている。  いずれにせよ、原発が全面的に再稼働したり、再生可能エネルギーの比率がドカンと上がりでもしない限り、日本でEV化を進めても、地球環境への負荷は軽くならないのは事実。こうしてガソリンエンジン技術を磨き続けているマツダが、思わぬ勝利者になる可能性は意外と高いのではなかろうか。  このスカイアクティブXを搭載した新型アクセラが登場するのは、約1年半後、2019年の予定だ。   取材・文/清水草一 【清水草一】 1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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