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チンコのような温かさで私を強くきつく抱きしめて――爪切男のタクシー×ハンター【第十三話】

 人生はこうも生き難い。  思い返してみれば、私が閉所恐怖症になった原因は親父から受けた体罰が原因であった。大学時代にアマチュアレスリングで名を馳せた親父は、大会で獲得した優勝トロフィーを応接間に何個も飾ってあった。親父にとっては大切な宝物だったのだろうが、当時中学生で反抗期真っ只中だった私にしてみれば、過去の栄光にすがっている哀れな男のコレクションとしか思えなかった。ある日の親子喧嘩の折、親父への報復行為として、私はそのトロフィー達を粉々に破壊してしまった。その時の親父の怒りはいつになく凄まじく、明らかなる殺意が宿った右ストレートを食らって、私は意識を失った  目を覚ますと暗闇の中にいた。  何か柔らかくて暖かい物の上に寝ている。周りは漆黒の暗闇だ。手足をブラブラと動かして、自分が生きていることを確認する。呼吸を整えてから一気に立ち上がったが、固くて冷たい物体が額に当たって立ち上がることができない。仕方なく、女がフェラをする時の中腰の姿勢で暗闇に目が慣れるのをじっと待つ。頭上から差し込む青白い光に気づき、光が差し込む先に小さな隙間を見つけた。その隙間から外の景色を窺ってみると、自分が地域の集会場にいることがわかった。この集会場には周辺地域に住む人々が共同利用できる施設がたくさんあり、その中の焼却炉に私は閉じ込められているようだった。  近所の大工さんが、近隣住民のためにと自作した焼却炉は、地面に縦横二メートル、深さ一メートルほどの大きさに掘られた穴の中に、コンクリートを流し込んで固めて作ったしっかりとしたものだった。鉄製の大きな蓋には小ぶりで可愛い煙突が通気口として取り付けられていた。近隣住民が家庭のゴミを持ち寄り、ある程度の量になったら燃やすというシステムになっており、田舎の集落ではたいへん重宝されていた施設だった。  自分がどこにいるかがわかっただけで若干心の平静を取り戻すことができた。もう少しすれば、家族の誰かが助けに来てくれるだろう。そう高を括った私は、それまでの時間を焼却炉の中で寝転んで待つことにした。自分の背中が徐々に熱くなってくる。焼却炉内に残っていた灰がまだ熱を持っているようだ。ちょっと前に燃やしたゴミの灰だろうか。終わりかけのホッカイロぐらいの微妙な温かさがやけに心地良い。家の布団で寝るより気持ち良かった。私は母に捨てられた身なのでよく知らないが、もしかしたら母親に抱きしめられる温かさというのは、これぐらいの温かさなのかもしれない。家に帰るのが面倒臭くなってきた。どうせ私が家にいても家族に迷惑をかけるだけだ。それならば、この温かい焼却炉の中で一生を過ごした方がいいかもしれない。温かい灰の上に寝転びながら、そんなことを考えていた。
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暇なのでオナニーをすることにした
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死にたい夜にかぎって

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