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チンコのような温かさで私を強くきつく抱きしめて――爪切男のタクシー×ハンター【第十三話】

 暇なのでオナニーをすることにした。  下腹部に伸ばした私の手に振れる温かくて確かな感触、それはチンコ。暗闇の中でもチンコはチンコ。なんて安心できる形と温かさであろうか。やはり最後に信じられるのは自分のチンコしかない。ひとしきり自分のチンコに感動した私はオナニーの準備に取り掛かることにした。  さて、誰をオカズにしようかなと思考を巡らせてみたが、どういうわけか往年のアイドルである堀ちえみの顔しか浮かんでこない。私は堀ちえみの直撃世代ではないし、取り立てて堀ちえみが好きだったわけでもないのに、その時の私の頭の中を堀ちえみの笑顔が独占していた。このまま誰も助けに来ずに、この中で死んでしまうようなことがあれば、これが人生最後のオナニーになるかもしれないのに、それが堀ちえみであっていいのか。いや、もしかすると男というものは、極限状態に追い込まれた時に、自分の本当に好きな女に気付くものなのかもしれない。私にとってはそれが堀ちえみだったのだろう。  自分を強引に納得させて、私は大いにシコッた。舞うように、激しく強く、男らしく。勢い余ってチンコをすっぽ抜けた右手が、頭上にある焼却炉の蓋に当たる。痛い。だがその鈍痛さえも気持ち良い。いつもと違った異常な環境でのオナニーに興奮した私はすぐに達してしまった。身体をエビ反りに持ち上げて、目の前に広がる漆黒の暗闇の中に精を解き放つ。黒い黒板に白いチョークで放物線を引くように、夜空を流れる白い流星のように、身体を左右に動かし左の闇、右の闇、右の闇から綺麗なカーブを描きながら左の闇に精を打ち放った。  私は音楽というものは、聴いていて気持ちが揺さぶれるかどうか、踊れるかどうかが大事だと思っている。歌詞なんてものはどうでもいいのだ。そんな私が唯一歌詞に感動した曲がある。スガシカオの「夜明けまえ」という曲だ。著作権の関係で、ここでの歌詞の引用は控えさせて頂くが、「夜明けまえ」の歌詞は、焼却炉の中でオナニーをした時の私の心情をかくも見事に如実に表している。もし興味がある方は歌詞を検索して頂きたい。
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幸せな時はいつも一瞬だ
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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