更新日:2022年08月14日 11:47
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テレクラで出会った“大きすぎる女”の手はとても温かかった――爪切男のタクシー×ハンター【第十五話】

 一人で悩みを抱えることが辛くなった私は、仲の良かった友達に相談してみた。「簡単なことだよ」。彼は事も無げにそう言って対応策を教えてくれた。 「鼻が赤いことを気にしてるから余計に赤くなるんだよ。深く深呼吸をして心を落ち着けたら、鼻の血行が落ち着いて赤みがマシになるよ」  そんな方法で治ったら苦労はしないと思いつつも、当時の私は藁にもすがる気持ちでこの方法を試すことにした。登下校中、休み時間、授業中、家でも常に「フ~フ~フ~フ~」という呼吸音を立てながら自分の心を落ち着けるようにした。それでも私の鼻は赤いままだった。そしてその怪しい呼吸音を聴いたイジメっ子により、私のあだ名は「ジャパン」から「サイボーグジャパン」に変えられた。イジメられながらにして機械の身体を手に入れた。  ある日、授業をズル休みして保険室で寝ている時に、アグネス・チャンによく似た美人の保険医に鼻のことを相談した。面倒くさいのでイジメられていることは内緒にした。先生は私の悩みを一笑に付して、こう言った。 「そんなの何も気にしなくていい! 男の子なんだから何があっても笑ってなさい! 君の笑顔は周りを幸せにするよ! 素敵な笑顔してるんだから!」  今までの人生で自分の容姿を褒められたことが無かった私は、先生のその言葉に素直に感動した。そして、その日からどんなに辛い事があっても満面の笑みで過ごすようにした。どれだけイジメてもへこたれない私の様子がつまらなくなったようで、私へのイジメは次第に無くなっていった。イジメは無くなったのだが、クラスのマドンナ的存在である女子に、こう言われてしまった。 「君のしわくちゃになった笑顔って虫の裏側に似てるね。カナブンとかの裏側」  以前にこの連載でも書いた「君の顔にいる顔ダニを退治してあげるね!」と言って、私にビンタをしてきた彼女である。ことあるごとに私のことをダニやカナブンと虫呼ばわりしてくるのだが、美人に無視される人生よりも、虫としてでも自分を認識してもらえる人生の方が素晴らしいじゃないか。
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ベランダに転がるカナブンの死体を眺めつつ…
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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