巨大災害時に首都圏をおそう“人の津波”――乱立する高層ビル&タワマン問題
―[[首都圏インフラ]老朽化の危機]―
巨大災害時にインフラの老朽化によって最初に起きるのは物理的被害。しかし、それ以上に恐ろしいのが、密集地で発生する二次災害だ。
「日本の都市インフラはかなり整備が進んでいて、地震が発生しても震度5強以上にならなければ、死者もほとんど出ません。そんな首都圏で一番の危険は、密集地であることです」(防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏)
東日本大震災発生時、道路や駅に人が溢れ返った光景は記憶に新しいが、そこで重要となるのがオープンスペースの存在だ。
「例えば火災では、幅の広い道路や公園、空地が火の手を遮断し、被害の拡大を食い止めます。それは人間にも言えることで、オープンスペースがあれば、スムーズな避難が可能になるのです」(同)
しかし、高層ビルやタワーマンションが乱立する首都圏において、こうした空地は減少するばかりだ。
「日本には1970年に創設された総合設計制度という法律があり、高層ビルを建てる際には周囲に公開空地がなければいけないという制限がありました。しかし、都心居住促進のために、規制の緩和が繰り返されたことで密集化が進んでしまったのです」(同)
法的な“リミッター”が外れたことで、有事の際には「人の津波」が発生する可能性も。交通機関の不足を指摘するのは不動産コンサルタントの長嶋修氏だ。
「臨海部なども環状2号線が通りますが、住人の数を考えるとまだまだ少ない。年金問題と同じように、都市計画の見直しも、もっと早く考えるべきでした。新築ブームが続いていますが、現状、インフラの整備は追いついていません」
実際に下町のタワマン周辺を調査すると、人が一斉に降りるラッシュ時には歩道が一瞬でいっぱいに。さらに最寄りの地下鉄駅では、短い通路を抜けるのに昼間の7~8倍の時間がかかるなど、人の波による圧力は想像以上だった。
― [首都圏インフラ]老朽化の危機 ―
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