更新日:2022年08月21日 11:46
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都心に暮らすホームレスの過酷すぎる現実――「若者に服を燃やされそうになった」「ホームレスにも縦社会はある」

最初は自由気ままな生活だったが……

 3年前、定職に就かずにフラフラしていたために妻に愛想をつかされた木島さん。離婚後、妻名義のアパートを追い出される形でネカフェ暮らしを続けていた。

「ネカフェでも、個室は高いので、仕切りがない席しか使いません」と、木島さん

「最初はね、すごく楽しかったんですよ。日雇いの仕事は定期的に入れてたから、自由気ままな生活を楽しんでいた。その頃は人が足りなかったからか、ネカフェの中に入ってきて仕事を斡旋する手配師もいたんです。でもそれも少なくなって、お金がないせいで自由な暮らしを謳歌できなくなった。自分の中では景気が上向いてるなんていう感覚はないですね」  結局、この日も仕事が得られなかった木島さん。ネカフェに泊まれないときの公園での野宿は、やはり危険と隣り合わせだという。 「公園で寝泊まりした初日に服を盗まれて、今はこの1着しか持っていません。デパートのトイレで何度も洗って大切に使っています。でも、トイレに長居してると警備員に目をつけられるから、服が乾く前にそれを着て、街を歩いて自然乾燥させてます。冬はさすがに厳しいですが我慢して着ています……」

「ホームレスの中にも縦社会はある」

 最近では、現場に入れない日は炊き出しでなんとか腹を満たす日々だという。 「自分みたいなオッサンだけじゃなくて、やっぱり若い連中の姿もけっこう見かけます。でも、公園でずっと寝てるベテランホームレスなんか意地悪で。並んでようやくもらえた豚汁を食べていると、わざとぶつかってきて、それをこぼされたりもする。一般社会だけじゃなくて、ホームレスの中にも縦社会ってあるんですよ」  寒空の下、木島さんはうつむきながら自らの将来を悲観する。 「1、2か月先にどうなっているのか、とにかく不安です。ただでさえ少ない仕事がこれ以上減ったらもう冬は越せないし。自分は人付き合いが苦手なんで、例えば誰かとケンカをして怪我させてしまったらどうやって保障すればいいのか……。それに将来、病気で働けなくなったら食事や住まいをどうすればいいのか。僕のことなんて誰も助けてくれないですよ。最近はそんなことばかり考えています」  優雅な多摩川ホームレスがいる一方で、実際は多くのホームレスがこうした過酷な生活を送っているのだ。 <取材・文・撮影/青山由佳 鴨居理子 建部博 取材/永田明輝>
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