年収180万・日雇い生活する42歳のリアル「ブラック正社員よりはマシ…」
並木さんは毎朝7時に起床。愛用している赤い自転車で家を出る。歩いて20分ほどの距離にある京急線の六郷土手が最寄り駅だが、向かう先は駅ではない。
「1時間半以内の現場は自転車で行ってしまいます。日給は交通費込みで支給されるので、自転車で行けばその分が浮きますから」
日も暮れかけた18時に作業が終了。夕食も当然自炊という並木さんは近所のスーパーで特売品を購入し、19時すぎに帰宅した。話を聞くため家に入ると、50代くらいの男性が出迎えてくれた。並木さんが暮らすシェアハウスの同居人だという。
「前のアパートに住み続けるのが経済的に難しくなり、ネットで見つけたこのシェアハウスに引っ越してきたんです」
現在の家賃は5万8000円。以前住んでいたアパートより安く、さらに家賃には光熱費・ネット代なども含まれているため、以前よりかなり出費を減らすことができたそうだ。
⇒【写真】はコチラ(狭いながら片付いた部屋)https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1313386
「プライベートよりも家賃を取りました」と笑う並木さんだが、将来への不安はないのだろうか。
「正直、将来への不安は徐々に大きくなっています。まともな会社の正社員に戻れるのならそりゃ戻りたいですよ。ただ、リストラ後に焦って就職して失敗した経験があるので、ただ正社員になれば良いというものでもないと思っていて。劣悪な環境でサービス残業しまくったあげく毎月17万円しかもらえない生活をするくらいなら、働いた分だけきちんとお金がもらえる今の生活のほうがラクですから。とはいえ、40歳を過ぎてしまい、これからは肉体労働もしんどくなっていくと思います。ケガや病気をすれば、収入がゼロになるリスクもありますし。あのとき、リーマンショックさえなければこんなことには……」
ビール券で買った瓶ビールをグラスに注ぎ、不安をかき消すように飲み干す並木さんであった。
<1か月の家計表>
月収(手取り) 15万円
住宅費 5万8000円
食費 2万円
外食費 3000円
水道光熱費 0円
通信費 2万円
その他雑費 1万円
ローン・借金 0円
こづかい 1万円
収支 +2万9000円
― 密着ルポ[年収100万円生活]の恐怖 ―
9時前に現場に着いた並木さん。「おはようございます!」と太めの大きな声で挨拶する様子からは、かつて大手企業でサラリーマンをしていた面影は感じられない。午前中は1袋20kgもあるというセメント材などを搬入し、12時に休憩に入る。他の作業員が近所の中華屋に入っていくなか、並木さんは持参したリュックから自前の弁当を取り出す。
「できるだけ自炊しています。水も水筒に入れてくるようにして、飲料は買いません。支出を減らすのは収入を増やすのと同じなので、他にもいろいろと工夫していますよ。今日は自転車でしたけど、やむを得ず電車で移動するときは必ず金券ショップで回数券を買うようにしたり。利用する路線にもよりますけど、片道500円の区間なら400円くらいで買えます。往復で浮いた200円で一回の弁当代にはなりますから」
ギリギリの生活の先に漠然とある将来への不安
1
2
『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-』 この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!? |
ハッシュタグ