更新日:2020年06月10日 22:15
仕事

年収180万・日雇い生活する42歳のリアル「ブラック正社員よりはマシ…」

 並木さんは毎朝7時に起床。愛用している赤い自転車で家を出る。歩いて20分ほどの距離にある京急線の六郷土手が最寄り駅だが、向かう先は駅ではない。 「1時間半以内の現場は自転車で行ってしまいます。日給は交通費込みで支給されるので、自転車で行けばその分が浮きますから」
並木さん

日によって現場は替わるが、1時間半以内の距離は自転車で出勤するルール。ヘルメットや靴に加え弁当や水筒など、カゴにのせるリュックはそれなりの重さになるが、交通費を浮かせるためには欠かせない

 9時前に現場に着いた並木さん。「おはようございます!」と太めの大きな声で挨拶する様子からは、かつて大手企業でサラリーマンをしていた面影は感じられない。午前中は1袋20kgもあるというセメント材などを搬入し、12時に休憩に入る。他の作業員が近所の中華屋に入っていくなか、並木さんは持参したリュックから自前の弁当を取り出す。 「できるだけ自炊しています。水も水筒に入れてくるようにして、飲料は買いません。支出を減らすのは収入を増やすのと同じなので、他にもいろいろと工夫していますよ。今日は自転車でしたけど、やむを得ず電車で移動するときは必ず金券ショップで回数券を買うようにしたり。利用する路線にもよりますけど、片道500円の区間なら400円くらいで買えます。往復で浮いた200円で一回の弁当代にはなりますから」

ギリギリの生活の先に漠然とある将来への不安

 日も暮れかけた18時に作業が終了。夕食も当然自炊という並木さんは近所のスーパーで特売品を購入し、19時すぎに帰宅した。話を聞くため家に入ると、50代くらいの男性が出迎えてくれた。並木さんが暮らすシェアハウスの同居人だという。 「前のアパートに住み続けるのが経済的に難しくなり、ネットで見つけたこのシェアハウスに引っ越してきたんです」  現在の家賃は5万8000円。以前住んでいたアパートより安く、さらに家賃には光熱費・ネット代なども含まれているため、以前よりかなり出費を減らすことができたそうだ。 ⇒【写真】はコチラ(狭いながら片付いた部屋)https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1313386
並木さん

並木さんの唯一といってもいい娯楽が動画観賞。家賃はネット回線料も込みなのが、このシェアハウスを選んだ大きな理由のひとつ

 「プライベートよりも家賃を取りました」と笑う並木さんだが、将来への不安はないのだろうか。 「正直、将来への不安は徐々に大きくなっています。まともな会社の正社員に戻れるのならそりゃ戻りたいですよ。ただ、リストラ後に焦って就職して失敗した経験があるので、ただ正社員になれば良いというものでもないと思っていて。劣悪な環境でサービス残業しまくったあげく毎月17万円しかもらえない生活をするくらいなら、働いた分だけきちんとお金がもらえる今の生活のほうがラクですから。とはいえ、40歳を過ぎてしまい、これからは肉体労働もしんどくなっていくと思います。ケガや病気をすれば、収入がゼロになるリスクもありますし。あのとき、リーマンショックさえなければこんなことには……」  ビール券で買った瓶ビールをグラスに注ぎ、不安をかき消すように飲み干す並木さんであった。
並木さん

衣類などはリサイクルショップで購入したケースに分類し、収納している。並木さんの几帳面な一面がうかがえる

<1か月の家計表> 月収(手取り) 15万円 住宅費 5万8000円 食費 2万円 外食費 3000円 水道光熱費 0円 通信費 2万円 その他雑費 1万円 ローン・借金 0円 こづかい 1万円 収支 +2万9000円 ― 密着ルポ[年収100万円生活]の恐怖 ―
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年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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