更新日:2022年08月14日 11:25
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新たな北方領土問題解決の糸口!? 「知床世界自然遺産」拡張構想

北方四島を国際的観光地&「アイヌの知恵」発信の拠点に

――そうすれば、北方四島のエコツアーもできるようになり、知床と北方四島が国際的な観光地になることも夢ではないと。11月24日に、衆議院第二議員会館で鈴木宗男・新党大地代表を直撃したのですが、これについて「いい構想だ」と答えました。
午来昌理事長

「日露平和公園協会」の午来昌理事長

午来:北方四島は「北半球最後の秘境」だという専門家もいます。その生態系を守りつつ、持続可能な漁業も徹底すれば、日本が高度経済成長期に失った原始的自然と水産資源の宝庫となるのは確実。ですから「世界的な環境問題を解決する手段になる」と考えて運動を続けています。鈴木宗男さんには評価をしていただきましたので、ぜひ安倍首相にも伝えて欲しいと思っています。  それから私は、北方四島を「アイヌ民族の知恵」を世界に発信する拠点にしたいとも思っています。北方四島には縄文時代からアイヌ民族が住んでいました。何千年にわたって彼らは川からも海からも森からも必要なものだけしか採らなかった。全てのものを神として祭りながら、そして自然を大事にして生き永らえてきた。  自然環境の破壊や水産資源の枯渇が国内外で深刻化している今こそ、アイヌ民族の生き方を学ぶ必要がある。それをこの地で実践して、お手本として発信する。その持続可能な生き方は、世界的に求められているものであるからです。  私の小さい頃は「アイヌは日本人よりも下だ」という教育を受けました。地元ウトロ中学校のとき、同級生とケンカをして「おまえはアイヌじゃないか」と見下して言ったことがありました。  私はいま80歳ですが、一度会って同級生に謝りたい。世界自然遺産登録に取り組んで来た私の人生を振り返ってみると、「アイヌ民族はすごいことをやってきたのだな」と思います。でも、日本の学校ではこのことを教えてこなかった。  だからこそ、この構想実現で北方四島を国際的観光地にすると同時に、アイヌ民族の智恵を発信する場にしたいのです。いま二島返還交渉を急ぐ必要はありません。北方四島全体を長期的に見据えたグローバルな取り組みが必要なのです。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 「知床の自然とアイヌの文化を大事にすることで、北方領土問題を解決したい」と語る午来理事長。日露首脳会談では進展があるのだろうか?  こうした構想が注目される一方、北方領土問題解決をからめた「経済協力」で、多額の税金が使われるようになるのではとも懸念されている。  『週刊SPA!』11月29日発売号掲載の特集記事「バラまかれる北方領土予算のカラクリ」では、シベリア鉄道北海道延伸計画、天然ガスパイプライン計画など、領土問題をネタにして進む経済的合理性なき構想についてリポートした。 取材・文・撮影/横田一(ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた最新刊『黙って寝てはいられない』<小泉純一郎/談、吉原毅/編>に編集協力)
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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週刊SPA!12/6号(11/29発売)

表紙の人/ 木村文乃

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