更新日:2022年08月22日 02:47
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妊娠中の生活保護受給者に「いつ堕ろすんですか?」――生活保護の現場が荒れるワケ

現場の対応だけでなく国の指導にも問題が

 水際作戦やパワハラが横行するのは、慢性的な人手不足や現場の士気の低下だけが理由ではない。生活保護行政が’80年頃から不正受給取り締まりの指導を続けてきたことも、大きな要因のひとつだ。 「生活保護の予算を削減するため、不正受給対策という大義名分で、国が受給者の数を減らすことを自治体に要求してきた。その結果、福祉事務所で働く人々の間で『自分たちの仕事は不正受給の取り締まり』という意識が共有され、疑いの目で申請者や受給者を見るようになったんです」(渡辺氏)  無職や病気でなければもらえないという偏見が多い生活保護だが、現在の収入が最低生活費を下回っており(都内単身の場合は13万円程度)、すぐに現金化できる資産がなければ誰でも受けることができる。働いていても収入が最低生活費を下回っていれば利用可能だし、資産価値が低ければ持ち家の所有も認められるのだ。 「大切なのは対人援助の専門家である社会福祉士などを現場に配置すること。そして、貧困に対する正しい知識を研修などで伝えていくことです。ケースワーカーの多くは大卒で公務員になっており、貧困を身近に見た経験がない。そのため『貧困は自己責任』という偏見を内面化し、誤解に基づいて受給者に接している人もいます」(同)  生活保護を巡っては“自己責任論”も跋扈しているが、受給者はどのような生活をしているのか? まずは実態を知ることが、誤解を解くきっかけとなるはずだ。 ― [生活保護]のリアル ―
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