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“元出演者”としてAV出演強要問題について思うこと【カリスマ男の娘・大島薫】

誰も強要しなくても、女性の中で強要は進んでいく

 そういう女性の一面を見てきたボクは考える。  果たして、「強要」というのはどこまでを指すのだろうか、と。  たしかにAV関係者らが言う通り、借金の形に無理やりAV現場に連れて来られたという強要は「特殊な例」だと思う。そんな大昔のAV業界のようなことは、1件2件くらいあったとしても、正直あり得ない。あれば問答無用で強要といっていいだろう。  しかし、我々男性は、知らぬ間に女性に何かを「強要」しているときがある。合コンでいい感じになった女性を何時間も口説いてホテルに連れ込んだり、交際を渋っている女性に会うたびにアプローチして付き合うように仕向けたり。もちろん最後にイエスを出すのは女性側だ。これに対して男は強要したつもりなんて、これっぽっちもない。だが、もし仮に女性すべてが男性のことを、《恐い対象》として見ていたとしたらどうだろうか?  あなたの性別が男性で想像しにくいのならば、身近な恐いもので考えてもらって構わない。ヤクザやイカつい男性に「契約書にサインしてくださいよ~」と言われたとして、必ずしも断りきれるだろうか? そこに恫喝や脅迫の言葉はない。むしろ優しい口調だ。だが、もう、そんな人たちに何かを迫られること自体が、強要だと思うのではなかろうか。  AVプロダクションもAVメーカーも必死だ。かわいい子が面接にやってきたら、なんとしてでも撮影を組みたい。だから、「どうする? イヤならやめてもいいよ?」なんてことは言わない。だって、営業マンが自分の商品を売り込むときに「いやいや、こんな商品買わなくっていいですよー!」とは言わないだろう。できるだけメリットを伝えるはずだ。それが仕事だし、AV業界の経営努力。何らおかしいことはない。  しかし、当の女性側から見れば、また違った視点が見えてくる。事務所で見知らぬ男性たちに囲まれて、何時間もAVに出演することを勧められる。AV現場ではちょっとイヤなことがあって監督に相談しても、「ええ! それくらいみんなやってるよ?」と突っぱねられる。誰も強要せずに、彼女の中だけで強要は進んでいく。そんな印象に思えるのではないだろうか。  最終的にイエスを出したのは、すべて彼女自身だ。この話はどこまでいっても、それを覆すことはできない。しかし、果たしてそれは彼女自身が自ら望んで出したイエスだと言い切れるのだろうか。この問題を見つめるとき、単純なデータや女性の言動をそのまま受け取るのではなく、女性が置かれている《女性という社会》についても考えることが必要だと、女装のボクは思うのだ。 【大島薫】 作家。文筆家。ゲイビデオモデルを経て、一般アダルトビデオ作品にも出演。2016年に引退した後には執筆活動のほか、映画、テレビ、ネットメディアに多数出演する。著書に『大島薫先生が教えるセックスよりも気持ちイイこと』(マイウェイ出版)。大島薫オフィシャルブログ(http://www.diamondblog.jp/official/kaoru_oshima/)。ツイッターアカウントは@Oshima_Kaoru
1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター@OshimaKaoru
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