マイナンバーで個人のカネの流れや医療情報が丸裸に!?
安倍政権が今国会で何としても成立させようと躍起になっている安保法案が批判を浴びている。実はその陰で、多くの重要法案がこっそり進められていた!
◆個人のカネの流れや医療情報が丸裸に!?<マイナンバー>
今年10月、全国民に「マイナンバー通知カード」が届く。マイナンバーとはいわゆる国民背番号(12桁)のこと。その後、所定の手続きで「個人番号カード」(以下、カード)を任意で入手できるが、運用開始は来年1月から。国民一人ひとりが、一生変えられない番号を与えられ、個人情報を国に管理される日がやってくる。
個人番号を使えば、役所での社会保障手続き(失業給付や生活保護など)に住民票などが不要となり、会社の支払調書も個人番号で紐づけされるので、税務署は正確な所得把握をし、適正課税と脱税防止を可能にすると期待されている。日本の全役所と国とが常時ネット接続する巨大管理が始まるのだ。
富裕層や大企業の脱税防止は望ましい。だが、「狙われるのは一般住民。住民のプライバシーが丸裸にされる」と危惧する人がいる。今年3月に『共通番号の危険な使われ方』(現代人文社)を出版した白石孝さんだ。例えば、こっそり副業するサラリーマンは少なくない。だが、税務署への申告が不要な仕事でも、今後は短期バイトにも支払調書に個人番号が明記され、キッチリ課税される。
それはまだいいほうだ。マイナンバーは前述の通り「社会保障」や「税」といった「官」分野が対象だが、来年1月の運用前に早くも「民」分野への運用を目指す改正法案が審議され、今年5月に衆議院で可決。その内容に驚く。私たちの「貯金」がその対象だからだ。つまり、誰かが貯金を覗く。
「’21年から、新規口座開設に個人番号記入が義務化されます。一部、金持ちの隠し資産を見つけてしっかり課税しろとの声もありますが、金持ちは海外に資産を移せばいいだけの話。一般国民が危ない」(白石さん)
◆マイナンバーが医療や貯金に紐づけ!?
内閣官房のWebサイトでは、その目的は「社会保障における資力調査や税務調査」とある。つまり、こんなシミュレーションが成り立つ。Aさんが失業した。就職先がなく、生活保護の申請に役所を訪れる。職員は、Aさんや親戚の個人番号をコンピュータに入力し、その貯金額を確認する。そして告げる――「あなたには裕福な親戚がいますよね」。
また、改正法案では「健康診断や予防接種の記録」も確認できる。神奈川県保険医協会の事務局主幹の知念哲さんは以下のシミュレーションを想定する。
「人によっては毎年の健康診断を受けない人もいますね。その人がもし生活習慣病になって、健康診断をサボっていたのがマイナンバーで判明したら『自己責任だ』と、治療に必要な公的補助が受けられないことも想定されます」
改正法案は参議院で審議が始まり、このままいけば今国会で成立の見込み。これに対して、「安易に成立させては危険」と反対の声も上がっている。今年6月、サイバー攻撃で100万人以上の年金情報が漏洩したが、「マイナンバーも危ない」との意識が広がったからだ。
「所得や社会保障の受益歴、貯金や病歴など個人情報の塊が一気に盗まれる。その可能性は覚えておきたい。国は当初、マイナンバーは社会保障などの公的分野に限る、と説明していました。ところが今国会の審議会などでは、マイナンバーを医療や貯金に紐づけしてくれといった話が出てきています」(白石さん)
また、過去の健康診断録から個人に群がる製薬会社も現れる。だから知念さんは「年金情報漏洩もありましたが、国が情報をきちんと守れないという懸念がある」と断言する。
さらに、患者の病歴や過去の診療内容、診療報酬の明細(レセプト)などの情報がマイナンバー経由でハッキングされやすくなる。国は「患者の重複診療を防ぎ、医療費抑制につながる」と強調しているが、「個人の医療情報は製薬、保険業界にとってのどから手が出るほどほしい情報です。いったん外に流出したら最後、日本の保険市場を狙う外資に使われまくるでしょう」(医療ジャーナリスト)。
政府は「国民にとっても利便性が高まる」と強調する。しかし、この制度は「国の徴税権力を強化」するためのものでしかない。国民のカネの流れと財産のありようが、丸裸になる日がそこまで来ている。
取材・文・撮影/樫田秀樹 志葉 玲
― 安保議論の陰でこっそり進む重要法案 ―
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